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2025/12/16 18:29
●野良と福祉
野良道具製作所は創業以来、何かしら福祉との関わりを持ってきました。
最初の製品である野良ストーブの組み立て・梱包をキャンプ仲間の勤める就労支援施設でやってもらったり、その仲間が独立して自分の施設を作るにあたって、支援とご祝儀かねて描き下ろしたのが上の「野桜」だったり。
あとはキャンプ業界と他業種の橋渡し的な意味合いでデザインした「ブックペグ」、これは単純な形の「ものづくり」から脱却し、製品そのものが企画になって福祉に繋げらんないかなって試みで。初めての寄付型商品もこのブックペグでした。
そして今回作った「むすび」。
ここに至ってはもうアウトドアとの関係感はゼロになっちゃいましたが、そんな感じでとにかくまあ何やかんやともがきながらやってきました。
で、そんな解説をしてきといて何なんですけど、自分としちゃ別に称賛がほしいわけでもなければ、「私達は福祉に取り組む素晴らしい企業です」みたいな事を言うつもりもさらさらなくて。というかむしろその逆で
そんなふうに「特別扱い」されがちな日本の福祉にNOを突きつける
的なスタンスで私はずっとやってきたつもりで。

これまでも「なんでアウトドア屋が福祉やってるか」ってのを商品ページやブログで一生懸命解説してきて。この前なんかインスタライブでもそれ必死で説明してたんですが。
でね、やっと気づいたんですけど
「なぜ福祉に取り組むか」をわざわざ説明しなきゃなんないってこと自体どうなん??
っていう違和感、そのモヤモヤがずっとあったんだなって。
●インクルージョンってなんだっけ
これもずーーーーーーっと言ってることですけど、誰しもが明日障がい者になるかもしれないわけで、つまり誰しもが福祉とは無関係じゃないのは否定しようがない事実なわけで。
だから福祉に取り組むのは別に普通のことであって、それをわざわざ説明しなきゃ「わかってもらえない」と思うこと自体がおかしいんだわ、ってことにようやく気付いたというか。
まあ気づいたから別にどうということもないんですが、自分としては引き続き普通に、当たり前に、そういった活動の報告もしていきたいなと思っておりますよと。
だってインクルージョンって本来そういうことじゃないですか。障害があろうがなかろうが、普通に、当たり前に生きていける社会を作ろうってことですよね。
それがいつの間にか、「インクルージョン」という「セールスポイント」のPR合戦になっちゃってるのは本当に日本らしいなというかなんというか、これを言うことさえタブー感醸し出すとこもまた日本らしいなというかなんというか。
●ものづくりと福祉は同じなんよ
じゃあ結局私は何がしたいのかというと、いや、なにがしたいかというか「何ができるか」を考えたらそれはやっぱり「ものづくり」でしかないわけでして。
というか私はものづくり自体がもう福祉だと思ってるんですよね。
だってそもそも道具ってやつ自体、弱い人間の力を補うためにあるわけです。
人間の弱い爪じゃ穴が掘れないからスコップがあり、
人間の弱い手じゃ釘は打てないからハンマーがあり。
弱さを「補う」のが道具であるということは変わらないんですよ。障害があろうがなかろうが。
障害があろうがなかろうが、人という弱い生き物は誰しもが何かしら「補う」ことで生きてるんすよ。
技術や科学が進化して、スコップはショベルカーになり、ハンマーも電動釘打ち機になり、しまいにはAIにまで「補って」もらってるのが人類で、その観点から言ったらもはや人類皆障がい者だし、
その観点に立ち返ることが本来のインクルージョンなんじゃないのかなと。
私が製品の設計をする時、まず最初にするのが課題の整理です。
現状の製品だと何が不満で、何が課題か。
そして次に、その課題を解決するための構造を考えます。できるだけシンプルで、手数を少なく。
同じなんですよ。全部いっしょ。

